日本耳鼻咽喉科学会会報
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最終講義
体平衡機能評価としての重心動揺研究
山本 昌彦
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2013 年 116 巻 5 号 p. 619-627

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抄録

私が身体重心動揺の研究を始める切っ掛けは, 恩師である岡田の志を継いでのことであった. 重心動揺計が1964年にフランスのBaronによって現在の形が作られ, 重心動揺研究が世界に広まった. しかし, 日本での体動揺の記録応用は古く, 1908年に島薗によって頭部動揺記録が臨床に応用されていた.
福田は, 姿勢反射について多くの解明を行い, 姿勢反射の世界的研究者として認められていた. このために, 姿勢や体平衡の研究がわが国で早急に進められ, 福田の著書,「運動と平衡の反射生理」は牛尾と大久保によって英訳され「Statokinetic reflexes in equilibrium and movement」として世界に届けられた. 福田の姿勢反射の研究は, 檜や時田らによって進められ, 福田の遮眼書字検査や足踏み検査が臨床検査として使われるようになった. 重心動揺計が開発され, コンピュータが出現するにつれて, 重心動揺のコンピュータ解析が始まった. 時田は, 多くの解析指標を考案し, 姿勢反射を定量的に評価する方法を作った. 同時に徳増や田口も重心動揺解析を行い体平衡研究を続けた.
多くの先陣の先生から学び, 私も重心動揺解析を進め, 新しい解析法を考案して急性内耳障害時の姿勢維持に, 偏倚と立ち直りの速度が眼振と同様の違いで行われていることを見いだし, 脊髄小脳変性症では, 症状の進行と共に前後動揺が強くなっていくことを示した. いまだ不明な事象が多い体平衡について, 一層の解明が必要である.

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© 2013 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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