2014 年 117 巻 10 号 p. 1258-1263
皮膚筋炎に対しステロイド治療中の61歳男性. 上部消化管内視鏡検査で左披裂部の隆起性病変を指摘され当科を初診したが, 既に隆起性病変は消退していた. 以後, 下咽頭領域の異なる部位で, 多彩な様相を呈する潰瘍性病変が増悪と軽快を繰り返し, 急性出血を来した際には緊急止血術を要した. CMV 感染による咽頭潰瘍の診断でガンシクロビルを投与し病変は消失した. 経過中, 皮膚筋炎による咽頭筋の筋力低下と粘膜病変による瘢痕の両者が原因と思われる嚥下障害を来した. これまでの文献報告と併せて検討し, CMV 感染による下咽頭潰瘍では, ① 急性出血, ② 声帯麻痺や出血による呼吸困難, ③ 深部組織への貫通に特に留意する必要があると考察した.