日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
胃瘻造設時の嚥下機能評価の意義と耳鼻咽喉科医の役割
―高齢者専門急性期病院の検討から―
木村 百合香大野 慶子本庄 需
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2015 年 118 巻 12 号 p. 1422-1428

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抄録

 厚生労働省は, 平成26年度の診療報酬改定で胃瘻造設時嚥下機能評価加算を新設した. 倫理的側面からだけでなく医療経済的な側面からも胃瘻の適応には厳格な判断を要することは明らかだが, 胃瘻造設時の全例の嚥下機能評価の必要性には検討の余地がある. そこで, 高齢者専門急性期病院における本加算導入前の胃瘻造設症例と嚥下機能評価についての検討を行い, 胃瘻造設時の嚥下機能評価の位置づけに関する考察を行った.
 東京都健康長寿医療センターで胃瘻造設術を施行した114例を対象とした. 背景疾患, 胃瘻造設理由, 造設前の嚥下機能検査の有無, 嚥下内視鏡検査の施行症例の嚥下内視鏡スコア評価 (兵頭スコア), 兵頭スコアの重症度を検討した.
 背景疾患は, 脳血管障害が33%, パーキンソン症候群が26%, アルツハイマー型認知症が11%であった. 胃瘻造設理由は, 嚥下障害が38%, 他院からの造設依頼24%, 食思不振・拒食による栄養障害が18%であった. 嚥下内視鏡施行例の兵頭スコアの分布は, 軽症が28%, 中等症が47%, 重症が25%であった.
 嚥下障害は胃瘻造設理由の過半数に満たず, 背景疾患には進行性神経疾患も多く, 全例に胃瘻造設前嚥下機能評価を行うことの意義には疑問を呈さざるを得ない. 胃瘻造設の適応症例中に兵頭スコア軽症群も存在し, 病態や社会的背景を踏まえた総合的な評価を要することから, 本加算の算定に当たっては耳鼻咽喉科医の積極的な取り組みが求められる.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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