日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
小児の口蓋扁桃細菌叢: 16S rRNA 解析を用いた検討
高橋 奈央相澤 直孝馬場 洋徳窪田 和土屋 昭夫山本 裕髙橋 姿渡辺 博文後藤 眞成田 一衛堀井 新
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2016 年 119 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

 人体には構成細胞数の10倍以上の微生物が存在し, それらを細菌叢 (マイクロバイオーム) と呼んでいる. 近年, マイクロバイオームは肥満や免疫疾患など人体の健康状態へ影響を及ぼすことが判明しつつある. 口蓋扁桃にも多数の常在細菌が存在し, マイクロバイオームが各種疾患発症に関与している可能性が考えられる. 今回, その基礎となるデータとして, 感染のない小児口蓋扁桃の細菌叢に関し検討した. OSAS に対して手術目的で摘出した小児口蓋扁桃の深部から組織を切り出し, その細菌叢を16S rRNA 解析にて同定し, 細菌培養結果および北欧における Jensen らの報告と比較した. その結果, Haemophilus 属の検出が最多であり, Sphingomonas 属, 嫌気性菌である Prevotella 属, Fusobacterium 属がそれらに続いた. Jensen らの報告では, Streptococcus 属, Neisseria 属, Prevotella 属の順であり, 人種差, 食習慣および採取部位による相違の可能性が考えられた. 培養検査では, Haemophilus 属, 続いて Streptococcus 属, Neiserria 属が多く検出され, Prevotella 属, Fusobacterium 属など嫌気性菌の検出率は低かった. 培養検査では Streptococcus 属との共存下では嫌気性菌の発育が抑制されることが一因と考えられた. 細菌培養検査と異なり, PCR を用いた16S rRNA 解析では難培養性の常在細菌叢に関する検討が可能であり, マイクロバイオームに関する研究には必要不可欠の手技と考える. 今後は成人例との比較や病巣扁桃における口蓋扁桃細菌叢の変化に関して検討を行いたい.

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© 2016 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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