日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
画像診断up to date
耳科領域の画像診断―MRI評価を中心に―
曾根 三千彦
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2017 年 120 巻 10 号 p. 1219-1223

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抄録

 画像検査の進歩は目覚ましく, 以前のMRI検査では感音難聴例を中心に小脳橋角部の検索が主な対象であったが, 現在では中・内耳疾患の病態把握にも有用な手段となっている. 中耳真珠腫の診断は外耳道の骨欠損と同部のdebrisが確認されれば容易であるが, 局所所見が正常でCT上も骨破壊を伴わない場合にはMRI拡散強調画像 (diffusion weighted image: DWI) が有用である. 最近の non echo planar 法では明瞭な画像が得られるようになってきており, 術前の真珠腫進展範囲把握や術後再発のフォローアップにもその有用性が報告されている. 一方, FLAIR (fluid-attenuated inversion recovery) MRI画像はさまざまな炎症に伴う内耳障害の評価に役立つ. FLAIR画像では, T1強調画像に比べて内耳のリンパの変化を鋭敏に捉えることが可能であり, 3D情報により脳脊髄液によるアーチファクトの影響を減少させ明瞭な所見を得ることができる. FLAIR造影で見られる高信号は, blood-labyrinth barrier (血液迷路関門) の破綻を示す所見を反映し, 急性中耳炎や内耳瘻孔を伴った中耳真珠腫の対応, ANCA関連血管炎性中耳炎による内耳障害を把握する手段としても応用可能である. 最近のMRI検査の画期的な利用法としては, 内リンパ水腫評価が挙げられる. 技術進歩により, 現在では造影剤静注4時間後のMRIでも内リンパ水腫の存在が鮮明に描出できるようになった. 内リンパ水腫は, メニエール病以外にもさまざまな耳症状や耳疾患で確認されている. 一側性メニエール病例においては, 全く無症状の健側耳にも内リンパ水腫が認められており, MRI評価は疾患の進行予測や予防の観点からも有用である. さらにMRI評価により聴力低下に伴う脳容積の萎縮も示唆されており, 聴覚補償による認知機能の低下予防も期待される.

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