2017 年 120 巻 11 号 p. 1318-1327
背景 : EBER (Epstein-Barr virus encoded small RNA) 陽性上咽頭癌は予後良好と報告されているが, EBER が上咽頭癌の予後に如何に関与するかは不明である.
方法 : 2005~2012年でがん研有明病院にて一次治療を行い, EBER を測定した上咽頭癌45例を対象に後向き解析を行った. 年齢, 性別, T・N 分類, 病期・病理分類, 亜部位, EBER 陽・陰性, シスプラチン投与量を対象とし, 全生存期間と無増悪生存期間, 独立した予後因子を求めた. また, 有害事象, 各因子間の相関, 死亡症例を解析した.
結果 : 5年全生存率, 無増悪生存率は76.9%, 63.2%であった. 単変量解析では, 全生存期間・無増悪生存期間において EBER, 病理・病期分類で有意差を認めた. 全生存期間では病理分類, 無増悪生存期間では病理・病期分類が独立した予後因子であり, EBER と病理分類に相関を認めたが, 治療後遠隔転移発生と相関する因子は認めなかった. 死亡症例では WHO type II・III が遠隔転移, WHO type I は原発・頸部転移が多く見られた.
結論 : EBER の陽・陰性は独立した予後因子とはならず, EBV 関連の有無は病理組織学的分類ほどの予後予測因子ではないこと, 独立した予後因子である病理組織型と EBV 感染の関連性が示唆された.