日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アンチエイジングへの挑戦
声のアンチエイジング
平野 滋
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2018 年 121 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

 日本は先進国の中でも最たる超高齢社会であり, 65歳以上の高齢者はすでに人口の4分の1で, 20年後には3分の1になるといわれている. 高齢化とともに成人病をはじめとする疾病罹患率は増加し医療費は増加の一途である. 医療費の抑制と健康増進のためアンチエイジングが脚光を浴びており, 声に関しても健康維持あるいは社会貢献の観点からアンチエイジングのよいターゲットとなる. 加齢による音声障害は往々にして仕事からの離脱, 社交場からの隔離に繋がり, 国民生産性の低下へと繋がりかねないからである. 声の老化は声帯レベル, 呼吸機能, 共鳴腔レベルで起こり, 包括的対処が必要である. 声帯のケアと維持は最も重要であり, 声の衛生はもとより, 積極的な声帯維持のために, 歌唱や機能性表示食品である抗酸化食品が効果的であることがエビデンスレベルで確認されてきた. 加齢声帯萎縮になった症例においては, 音声機能拡張訓練を代表とする音声治療である程度の効果が確認されているが, 重度の声帯萎縮に対しては塩基性線維芽細胞増殖因子を用いた声帯再生医療が効果を上げている. ヒトが健康寿命を保つために声の維持は重要であり, また, 声帯の維持は嚥下機能の維持にも繋がることが期待される.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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