2018 年 121 巻 12 号 p. 1458-1462
頭頸部癌に対する薬物治療は手術療法, 放射線療法とともに集学的治療の一環として行われてきたが, 近年その役割は大きくなってきた. その背景として従来の白金製剤, フッ化ピリミジン系薬剤に加えタキサン系抗癌剤が登場したこと, 分子標的薬の登場, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の薬物療法に対する知識の普及や認識の変化, 各種支持療法の発達などがあると思われる.
頭頸部癌に対する薬物療法は ① 放射線療法との併用 (化学放射線療法: Chemoradiotherapy: CRT), ② 導入化学療法 (喉頭温存目的), ③ 再発転移癌に対する全身療法として用いられる. 中でも, セツキシマブやニボルマブの登場により再発転移癌の治療に対する耳鼻咽喉科医の認識は大きく変わったといえる.
薬物療法の進歩により, 頭頸部癌の治療選択肢は増加し, 薬物療法の適応決定や有害事象対応には多診療科, 多職種によるチーム医療が不可欠となった. 頭頸部癌診療に携わる耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は日頃から薬物療法に関する知識を update し, 適正に提供していく必要がある.