日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アンチエイジングへの挑戦 誤嚥
武田 憲昭
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2018 年 121 巻 2 号 p. 89-96

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抄録

 誤嚥はヒトに特異的であり, 動物は誤嚥をしない. ヒトが経口摂取をして音声言語でコミュニケーションを取れば, 誤嚥を完全に防ぐことは困難である. ここに誤嚥の治療や予防の難しさがある. 誤嚥の分類に応じて, 嚥下機能を改善するためのさまざまな嚥下訓練が行われている. しかし, 訓練効果が示されている嚥下訓練は少なく, 嚥下機能の改善が示されている嚥下訓練に乏しいのが現状である. 誤嚥の診療で最も重要なことは嚥下性肺炎の予防である. 咳反射は最も重要な気道防御機構であるが, 嚥下性肺炎の患者では咳反射閾値が上昇している. このことから, 咳反射を改善することで嚥下性肺炎を予防する目的で, ACE 阻害薬やカプサイシンによる嚥下性肺炎の予防法が開発されている. われわれは, 外耳道にカプサイシン軟膏を塗布することにより Arnold's ear-cough reflex を介して嚥下障害患者の咳反射を改善し, 嚥下性肺炎を予防する方法を開発した. しかし嚥下訓練や嚥下性肺炎の予防法には, 質の高いエビデンスに乏しい. 誤嚥のリスクの高い患者の嚥下機能を適切に評価し, 作用機序に基づいて嚥下訓練や嚥下性肺炎の予防法を適切に選択することが, 超高齢社会に求められる耳鼻咽喉科医の役割である.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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