日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
自閉症スペクトラムなどにおける聴覚過敏について
―保護者に対するアンケート調査と文献的考察―
辻 富彦
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2018 年 121 巻 5 号 p. 679-687

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抄録

 自閉症スペクトラム (ASD) の子供の聴覚過敏について保護者に対するアンケート調査による解析を行った. 症例は小学校2年~高校3年までで現在防音保護具を使用している15例である. アンケートは症状の履歴, 現症, 対策について40項目にわたる項目に対して保護者に記載してもらった. 症状に気づいた年齢は2~5歳が大半を占めたが, 聞こえは普通という例がほとんどであった. 症状は年齢が進むにつれ少しずつ改善している例, 不変な例が半々で一部に悪化している例があった. 嫌がる音は個人差が大きくさまざまであったが, その音圧レベルとは必ずしも相関していなかった. 特に嫌がる音では子供や赤ちゃんの声や泣き声が多く, 大丈夫な音はテレビなど画像を伴う音が目についた. 防音保護具は7歳で使用を開始している例が多く, 使用により落ち着いた生活を送れるという例が多かった. 音に慣れる治療は “有効と思わない” という保護者が多かったが, その一方で自分で掃除機をかけるようになって掃除機の音に慣れたという例もあった. ASD の聴覚過敏には環境対策のほか, 防音保護具の使用が有効であることが確認された.

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