日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
ビスホスホネート製剤長期投与歴のある外耳道真珠腫の臨床像
―保存的治療効果から見た検討―
金沢 弘美新鍋 晶浩高橋 絵里増田 麻里亜民井 智山本 大喜江洲 欣彦長谷川 雅世織田 潔吉田 尚弘
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2018 年 121 巻 6 号 p. 783-790

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抄録

 ビスホスホネート薬剤は, アレンドロン酸 (商品名: ボナロン, フォサマックほか) やソレドロン酸 (商品名: ゾメタほか) など骨粗鬆症や癌の骨転移に対する第一選択薬であり, 特に高齢者が内服中の薬として日々の外来診療においてよく見かける薬剤である. 日本においては, 1990年代中頃より発売開始となっている. 副作用として顎骨壊死が知られているが, 2005年頃より外耳道骨壊死も海外から報告されるようになり, 2016年5月には厚生労働省により重大な副作用として追記されている. そこで現在当院外来を通院している外耳道内に限局した外耳道真珠腫患者18例の薬剤使用歴を調べたところ, 6症例において同製剤の長期使用が確認され, これらは全例骨露出病変を認めていた. 同製剤使用の有無により分けて保存的治療効果について比較検討を行った結果, 同製剤使用症例は, 保存的治療のみでは骨露出部の上皮化は難しい傾向であった. これより骨露出を認める外耳道真珠腫の難治化に関係している可能性が示唆された. 外耳道骨壊死の診断基準はまだ確立されておらず, 顎骨壊死の基準を参考にすると, 6例中5例において当てはまった. ビスホスホネート製剤は今後高齢化に伴い同製剤長期間使用患者の増加が予想され, 外耳道真珠腫症例を診る際には, 同製剤使用歴の確認, 患者側への説明が大切であると考えた.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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