日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
IgG4 関連疾患
高野 賢一
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2019 年 122 巻 10 号 p. 1299-1303

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抄録

 IgG4 関連疾患の疾患概念が提唱されてから15年以上が経過し, われわれ耳鼻咽喉科の日常診療においても比較的よく遭遇する疾患のひとつとなっている. IgG4 関連疾患の好発部位は, 涙腺・唾液腺と膵・胆管病変であり, 頸部や縦隔リンパ節腫脹を認めることも多く, 耳鼻咽喉科領域では IgG4 関連涙腺・唾液腺炎を診断する機会が多いと思われる. 疫学的にみると, 性差は涙腺・唾液腺炎症例ではおおむね等しいが, 自己免疫性膵炎症例では女性が多い. 年齢は60歳代を中心に比較的高齢者に多くみられる疾患ではある. 乾燥症状がほぼ必発であるシェーグレン症候群と異なり, IgG4 涙腺・唾液腺炎では眼および口腔乾燥症状を訴える患者は多くはなく, 乾燥症状そのものに対する治療を要することは少ない. しかし, 自覚症状に乏しくとも唾液腺分泌機能低下を来している症例は少なくなく, 60%に涙腺分泌機能低下, 68%に唾液腺分泌機能低下が認められる. シルマーテストは 5.42 ± 7.36 (± SD) mm/5分, サクソンテストは 2.57 ± 2.01g/2分と, 機能低下は軽度ではあるものの, ステロイドによる治療後には有意に改善を認める点が特徴的であり, シェーグレン症候群とは異なる点でもある. IgG4 関連涙腺・唾液腺炎は, 腺腫大と血清学的所見,病理組織学的所見によって診断されるが, 確定診断および悪性疾患や類似疾患除外のためにも, 組織生検が望ましい. 生検部位としては腫脹している罹患臓器が原則であり, 大唾液腺から採取するのが推奨される. また, IgG4 関連疾患は全身性疾患であり, 他臓器病変を常に念頭に置く必要がある. IgG4関連涙腺・唾液腺炎における腺外病変の合併頻度は約60%であり, 膵臓 (自己免疫性膵炎) が最も多く, 次いで後腹膜腔 (後腹膜線維症), 腎臓と続く. IgG4 関連涙腺・唾液腺炎を診断した際は, 他臓器病変にも注意を払う必要があり, 経過中に腺外病変が出現することもあるため気を付けたい.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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