日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
耳鼻咽喉科内視鏡の感染制御と安全管理
鈴木 賢二
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2019 年 122 巻 2 号 p. 105-110

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抄録

 1976年に米国における消化器内視鏡を介した感染事故が Silvis らにより初めて報告され, 1985年にわが国で, 日本消化器内視鏡学会消毒委員会より内視鏡を介した B 型肝炎ウイルスの感染の実態や内視鏡検査被検者の8.5%に B 型肝炎ウイルス感染が確認されグルタラールによる検査毎の消毒が感染防止に有用であることが報告された. 厚労省は2007年3月の通知で,「医療機器の使用に当たっては, 当該医療機器の製造販売業者が指定する使用方法を遵守するべきであり, 十二指腸内視鏡の洗浄及び消毒又は滅菌に関しては, 関連学会等の策定するガイドライン及び添付文書・取扱説明書等に記載される製造販売業者が定める方法を遵守する.」としている. これまでに開発・臨床導入された消化器科, 泌尿器科, 呼吸器科においては既に内視鏡感染制御のガイドラインあるいは手引き書が示され活用されている.

 しかしながら, これまで耳鼻咽喉科領域では内視鏡を介した感染事故は学会等での報告もなく, 社会問題にもなっていなかったこともあり, ガイドラインあるいは手引き書は示されていなかった. 日本耳鼻咽喉科学会は2016年4月18日付けで会報に “耳鼻咽喉科内視鏡の感染制御に関する手引き” を公表した. 内視鏡は優れた臨床的診断能力と, 簡便に行われる検査であることより, 特に耳鼻咽喉科においては使用頻度が極めて高くなっている. しかし高価なこともあり施設毎に保有される内視鏡の数は限られているため, 他科のガイドラインをそのまま踏襲することには限界があり, 耳鼻咽喉科領域での実状に合った内視鏡感染制御の手引き書が作成された.

 本稿ではわが国における各科内視鏡の感染制御に関する行政を含めた各科の対応につき述べ, 安全管理に則った「耳鼻咽喉科内視鏡の感染制御に関する手引き」の概要と実際の手順の解説を行った.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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