日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
甲状腺腫瘍治療の最新情報
折田 頼尚
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2019 年 122 巻 5 号 p. 724-727

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抄録

 甲状腺乳頭癌 (PTC) は, 中には癌でありながら生涯無害に経過する病変が存在する, 頸部リンパ節転移 (N) は重要な予後因子とはならない, 若い患者の方が予後が良い, などほかの癌とは異なった性質を持つ. また, PTC には生物学的悪性度の異なる低危険度癌と高危険度癌の2種類があるという概念が存在し, 低危険度癌は癌死する危険性がほとんどなく非常に予後が良いことが分かっている. 近年, リスク評価に基づく個別の治療選択が行われるようになり, 無症候性微小 PTC (T1aN0M0) の非手術観察や, noninvasive follicular thyroid neoplasms with papillary-like nuclear features (NIFTP) の概念の提唱など, 超音波検査 (US) の普及などに伴う過剰診断・過剰治療の問題に対する対策も含めた risk adapted management の観点において大いなる進歩が見られる. ここではこれまでの PTC に対する治療態度における本邦と欧米諸国の相違, 変遷を振り返るとともにこれからの課題, あるべき治療態度について解説し考察する. われわれは常に肉体的・精神的・経済的すべての面で最も患者の利益となる治療を提供すべく努力を続ける必要がある.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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