日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
中・下咽頭癌に対する経口的治療
―ELPS, TOVS を 中心に―
山下 拓岡本 旅人加納 孝一堅田 親利
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 122 巻 5 号 p. 750-756

詳細
抄録

 咽喉頭内視鏡や消化器内視鏡の進歩により, 頭頸部の表在癌や比較的早期の浸潤癌が発見されることが多くなってきた. 当科では, 経口的手術前の局所病変の広がりの診断や深達度の予測および重複癌のスクリーニングを目的として, また頭頸部癌切除断端陽性ないし近接, 飲酒喫煙歴, flusher, 食道癌の既往, 食道粘膜の多発ヨード不染帯などの高リスク症例の術後サーベイランスを目的として消化器内科医およびトレーニングを受けた耳鼻咽喉科医による NBI 拡大内視鏡観察を用いた上部消化管内視鏡検査を行っている. リンパ節転移やリンパ管侵襲の予測因子である上皮下層浸潤は, 0-Ⅰ 型および NBI 拡大内視鏡による type B2/B3 血管と相関があり, 内視鏡所見の詳細な記載が手術プランの決定に重要と考えている.

 ELPS (endoscopic laryngo-pharyngeal surgery) は耳鼻咽喉科医と消化器内科医の共同手術として, 中・下咽頭, 声門上の表在癌を対象に行っている. 75例111手術の検討において局所制御率は比較的良好であり, 現在まで再発例も再度経口的手術を行うことで制御され, 5年疾患特異的生存率92.2%と良好な結果が得られている.

 TOVS (transoral videolaryngoscopic surgery) は耳鼻咽喉科医単独で行う手術として, Tis-T2, 一部の T3 症例の中咽頭および声門上癌を中心に行っている. TLO (transoral lateral oropharyngectomy) の手術環境では71.4%であった断端陰性率が, TOVS では88.9%と向上しており, 手術環境の改善が断端陰性率の向上, ひいては予後改善や機能温存にも寄与すると考えている. TLO と TOVS を合わせた51例の検討において, 5年疾患特異的生存率・粗生存率はともに92.8%と良好である.

 本邦で独自に開発された ELPS, TOVS は各種デバイスの進歩, 経験数の増加により, 治療成績, 機能温存, 安全性などの点において安定した経口的切除手技として確立・発展してきた.現在, 表在癌に対する本邦における経口的手術の絶対適応決定や, その後に続く適応範囲拡大のための臨床試験である「頭頸部表在癌に対する経口的手術の第 Ⅱ/Ⅲ 相試験 (TOS-J trial)」が行われており, その結果が期待される.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top