日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
慢性めまいへの対応―前庭代償不全―
北原 糺
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2019 年 122 巻 8 号 p. 1097-1101

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抄録

 一側内耳の前庭障害により生じた前庭系の左右不均衡は, 中枢前庭系の神経可塑性, すなわち前庭代償によって是正される. 前庭代償は, 静的前庭代償と動的前庭代償に分けられる. 静的前庭代償の初期過程では, 前庭神経核間の交連線維や前庭小脳により, 健側前庭神経核ニューロンの自発発火が抑制され, 左右の前庭神経核ニューロンの活動性の不均衡が是正される. さらに後期過程では, 低下していた障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が回復する. 動的前庭代償では, 健側の前庭神経核ニューロンからの交連線維を介した入力により, 障害側前庭神経核ニューロンの回転刺激に対する反応性が回復する. 静的代償は速やかに達成されるが, 動的代償が不十分な場合は平衡障害が残存する. 動的前庭代償には健側からの前庭入力が重要であるため, 一側前庭障害患者はめまいの急性期を過ぎれば早期に離床することがすすめられる. 不十分な動的前庭代償による慢性の平衡障害には, 前庭リハビリテーションが有効である.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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