日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
GJB2 遺伝子変異が検出された小児難聴症例の検討
仲野 敦子有本 友季子務台 英樹松永 達雄
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2020 年 123 巻 10 号 p. 1225-1230

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抄録

 

 GJB2 遺伝子変異は遺伝性難聴の中で最も多い原因である. 千葉県こども病院において聴覚管理を行っている難聴症例のうち, 2008年12月~2016年12月までに難聴の遺伝学的検査を実施した231例中, GJB2 遺伝子変異が検出された64例を対象とし臨床経過と保険診療における遺伝学的検査に関して後方視的に検討した.

 64例中59例は GJB2 遺伝子変異による難聴, 5例は保因者と診断した. 聴力レベルとしては中等度難聴が最も多く, また聴力の左右差が 10dB 以内の例が多かったが, 左右差 30dB 以上の例も3例認められた. 新生児聴覚スクリーニング (NHS) を受けていた28例中6例は両側あるいは一側パスの例であり, そのうち少なくとも3症例は難聴が進行した可能性が高いと考えられた症例であった. 5年以上聴力経過を追えた例では, 3歳時と最終検査時の聴力の差は平均1dBであった.

 NHS で早期に難聴が発見され, 遺伝学的検査で GJB2 遺伝子変異による難聴と診断された乳幼児の場合, 遺伝学的検査は難聴予後の推測には役立つと考えられたが, その結果だけからは難聴の程度の決定は困難であり, 進行例もあること等を考慮する必要もあると考えられた.

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