日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療
谷内 一彦
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2019 年 123 巻 3 号 p. 196-204

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抄録

 アトピー性皮膚炎, 花粉症, 食物アレルギー, 蕁麻疹などアレルギー疾患は多くの国民が罹患している. 抗ヒスタミン薬は即効性があるのが利点であり, アレルギー治療における中心的薬物である. 開発初期の第一世代抗ヒスタミン薬はアレルギー疾患に対する効果が認められる一方で, 強い鎮静作用 (眠気, 疲労感, 認知機能障害), 口渇, 頻脈といった抗コリン性作用, そして心毒性などの副作用が問題視されていた. 現在, 花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患症状の緩和に非鎮静性抗ヒスタミン薬が First-line treatment であり, 非鎮静性抗ヒスタミン薬のアレルギー疾患への長期投与の治療効果は高い. 日本では過去に鎮静性抗ヒスタミン薬が格段に多く使用されていたが, 古典的抗ヒスタミン薬の使用はアレルギー性疾患には世界中のガイドラインでほとんど推奨されていない. 鎮静性抗ヒスタミン薬は制吐剤, 抗動揺病, 抗めまい薬などの使用に限定される. 脳内ヒスタミン神経系の機能に配慮し, 脳内移行のより少ない非鎮静性抗ヒスタミン薬が第一選択として求められる. その非鎮静性を判断する場合に, ヒスタミン H1 受容体占拠率を用いることを推奨している. ヒスタミン H1 受容体占拠率の最新データと薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療について提言する.

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