日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
篩骨胞を温存した前頭洞開放に影響する解剖構造についての検討
平賀 良彦荒木 康智都築 伸佳佐原 聡甫橋本 陽介川﨑 泰士小川 郁
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2020 年 123 巻 5 号 p. 356-362

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抄録

 内視鏡下副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery: ESS) において, 近年は先に篩骨胞を開放せずに, agger nasi cell(ANC) を開放した後に排泄路を篩骨胞前壁の上方にたどって前頭洞を開放する方法である篩骨胞温存前頭洞開放術 (intact bulla frontal sinusotomy: IBFS) も行われている. IBFS は安全で教育的な術式であるが, 全例で施行可能ではないため, IBFS に影響する因子について検討を行った. IBFS を試みた65側を後方視的に検討し, ① 前篩骨蜂巣のバリエーション, ② 前頭洞病変, ③ 鈎状突起上方基部付着部, ④ ANC の前後径, ⑤ 矢状断における前頭洞排泄路 (FSDP) の鼻堤部からの距離, ⑥ anteroposterior diameter, ⑦ 副鼻腔構造以外の因子 (性別, 年齢, 好酸球性副鼻腔炎の有無, 中鼻道ポリープの有無) について検討を行った. Supra bulla frontal cell(SBFC) が存在する症例では IBFS の完遂率は52% (11/21) で, SBFC なしでは93% (41/44) であった (p=0.0003). FSDP に病変があると IBFS の完遂率は73% (36/49) で病変がないと100% (16/16) であった (p=0.027). そのほかの項目は IBFS の完遂に影響を与えなかった.

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© 2020 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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