日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
局所進行聴器扁平上皮癌に対する動注化学療法併用放射線治療
杉本 寿史波多野 都吉崎 智一
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2020 年 123 巻 9 号 p. 1168-1174

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抄録

 進行期聴器扁平上皮癌は予後不良な疾患である. なぜなら近傍に頭蓋底や大血管が存在するため, 進行すると safety margin をつけた一塊摘出が困難となってしまうためである. また, 骨または軟骨浸潤する腫瘍は放射線治療に抵抗性であるために, 骨浸潤することが多い進行期聴器扁平上皮癌は放射線治療で制御しがたいこともその理由の一つである. 今回われわれの施設および関連施設において, 14例の進行期聴器扁平上皮癌患者に対して動注化学療法併用放射線治療を行った. 5年推定累積生存率は64.3%と比較的良好な結果であったが, 頸部リンパ節転移のある症例においては4例のうち2例が肺転移にて原病死し, 1例が肺転移を含めた担癌状態と満足のいく結果が得られなかった. 2011年からの6例は, シスプラチン 150mg/body を5クール (総量 750mg) で固定したが, 重篤な骨壊死や血管塞栓は見られなかった. 2症例において顔面神経麻痺を発症したが, ステロイド投与後すみやかに正常回復した. すべての症例で中断や脱落なく治療を遂行できた. 今回の結果から本治療は, 局所の進行度が高くリンパ節転移のない症例, 全身化学療法の完遂が困難な症例に対する治療の選択肢の一つとなるものと考えられた. ただし腫瘍の栄養血管が後耳介動脈, 浅側頭動脈, 後頭動脈, 外頸動脈, 上行咽頭動脈と多岐にわたるため, 的確な血管造影手技を擁する施設において行うことが推奨される.

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