2020 年 123 巻 9 号 p. 1191-1196
中耳手術中に鼓索神経を操作し術後味覚障害が起こることは知られているが, 術後の味覚障害の回復過程についてはあまり知られていない. 本稿では味覚障害が関係した興味深い症例5例を提示し, 当科で行った症例に関連する臨床研究の結果, 味覚障害を避ける保存的中耳根本術, 小児の良好な術後の味覚回復率, 鼓索神経切断後の断端吻合, 聴力改善より味覚維持を重要視する場合, 舌の痺れの出現率と回復率を記載した. 中耳手術は機能手術であるので, 聴力改善や真珠腫除去を目指すだけでなく, 患者の術後の QOL を考慮すべきことを強調したい.