日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
乳幼児急性中耳炎の現状と対応重症度の変化による対応
工藤 典代
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2021 年 124 巻 7 号 p. 982-986

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抄録

 小児急性中耳炎の診療は, すべての急性中耳炎に同じ治療を行うのではなく, 初診時に重症度分類を行い, 重症度に応じた治療を行うことが推奨されている. わが国では小児急性中耳炎診療ガイドラインが2006年に初版となり, 重症度に基づいた治療アルゴリズムが呈示された. 重症度は年齢条件 (2歳未満かどうか), 臨床症状として耳痛・発熱・啼泣/不機嫌の3小項目, 鼓膜所見として鼓膜発赤, 鼓膜膨隆, 耳漏の有無と量の3小項目からスコアシートに従いスコアの合計点で軽症・中等症・重症の3つに分ける. この中で鼓膜異常所見は重要度が高く, スコアの点数も高く設定されている. 軽症の第1段階は抗菌薬非投与で3日間経過観察を行う. 改善ない場合にはアモキシシリン (AMPC) 常用量を投与する. 中等症, 重症時の第1選択薬はアモキシシリン (AMPC) 高用量である. 抗菌薬の投与は3~5日間とし, 改善がなければ第2段階の治療を行う. 鼓膜異常所見が高度であれば鼓膜切開を行うが, 2018年版からは「鼓膜切開が可能な環境では」と注記がつけられている. また, 新薬とされるテビペネムピボキシル (TBPM-PI), トスフロキサシン (TFLX) は重症の第2段階以降に位置付けられている.

 AMR (薬剤耐性) 対策アクションプランが2016年に公表されたが, 急性中耳炎の抗菌薬治療は「適切な抗菌薬を, 必要な場合に限り, 適切な量と期間」投与するという姿勢は, 2006年初版時より一貫しており, AMR 対策アクションプランに沿ったものとなっている.

 抗菌薬スイッチの際には細菌の抗菌薬感受性結果が重要であり, 抗菌薬投与時に細菌検査を行う. 抗菌薬治療では, ピボキシル基を持った抗菌薬の投与により低カルニチン血症が生じることに留意する.

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