日本耳鼻咽喉科学会会報
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各種耳疾患に見られる側頭骨発育状況
矢澤 代四郎鈴木 幹男北野 博也北嶋 和智
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1997 年 100 巻 11 号 p. 1361-1367

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抄録

各種耳疾患の側頭骨発育状況の違いを検討するために両側メニエール病 (n=13), 一側メニエール病 (n=41), 一側慢性中耳炎 (n=25), 側頭骨骨折 (n=9), 耳硬化症 (n=12) を対象として, 外側半規管を含む内耳ターゲットCT画像スライス面で側頭骨後頭蓋窩側の骨の発育状況を計測ソフトNIH Imageを用いて計測した. 各疾患群の患側 (先発耳, 悪聴耳) と健側 (後発耳, 良聴耳) 別に統計的に比較した. 側頭骨骨折は耳疾患の既往歴のない症例を選択し, これを正常コントロール群と見なして検討した. 耳硬化症の悪聴耳と良聴耳の両耳とも後半規管と後頭蓋窩錐体縁 (P-P距離) および前庭と後頭蓋窩錐体縁 (V-P距離) は他の疾患と比較して有意に長く (p<0.01), 耳硬化症において後頭蓋窩側の骨発育が非常に良好であることがわかった. 一方, メニエール病では同部位の距離が短く, この傾向は両側メニエール病の先発耳が最短で, 次いで両側メニエール病の後発耳, 一側メニエール病の患側の順に長くなった. 重症なメニエール病ほど側頭骨の後頭蓋窩側の発育が障害されていた. 一側慢性中耳炎の患側では側頭骨蜂巣の発育障害を認めたが, 後頭蓋窩側の発育については患側と健側間には有意差を認めず, 側頭骨骨折とほぼ同程度の発育を示し, メニエール病と耳硬化症の中間の値を取った. 側頭骨後頭蓋窩側の骨の発育状況から見ると, 最も発育が悪いのは, 両側メニエール病で, 次いで一側メニエール病, 慢性中耳炎, 側頭骨骨折であり, 耳硬化症が最も発育が良かった. 側頭骨骨折群では後半規管とS状静脈洞の距離 (P-S距離) が他の疾患群よりやや長かった.

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