日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
口腔・中咽頭がん術後嚥下機能の評価
嚥下機能評価基準 (Swallowing Ability Scale) の妥当性について
藤本 保志松浦 秀博川端 一嘉高橋 浩二田山 二朗
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 100 巻 11 号 p. 1401-1407

詳細
抄録

(緒言) 我々は口腔・中咽頭癌の治療後の嚥下障害の評価のため, 嚥下機能評価基準 (Swallowing Ability Scale: 以下SASと略す) を考案し, 報告してきた. これはMTFスコアと嚥下障害スコアからなる2段階の評価であり, MTFスコアは簡便に患者の大まかな摂食能力をとらえ, 嚥下障害スコアはさらに詳細な検討を可能にするものである. 今回, 多数例の検討から, その妥当性を検証した.
(対象と方法) 愛知県がんセンター頭頸部外科及び癌研究会付属病院頭頸科において平成7年7月から平成8年6月までに施行された口腔・中咽頭癌切除症例でSASにより評価した73例, のべ90例.
検討した項目は (1) 舌・口腔底がん40例における舌切除範囲による2つのスコアの変動, (2) 全症例73例における2つのスコアの相関性, (3) 経時的な変化, の3点である.
(結果) 舌・口腔底切除例において舌切除範囲が拡大するとともに, MTFスコア (p<0.01), 嚥下障害スコア (p<0.05) はいずれも有意に低下し, 障害の程度をよく反映した.
MTFスコアと嚥下障害スコアには相関性があった. (r=0.78, p<0.001) また, リハビリテーションの前後において両スコアは相伴って改善を認め, 経時的変化を鋭敏に評価しえた.
(結論) 本嚥下機能評価基準は, 機能障害の程度をよく反映する2段階のスコアからなり, 両者は目的に応じて使い分けたり組み合わせたりすることができる. つまり, 摂食状況の簡便な評価にMTFスコア, さらに詳しい障害部位の推定と経時変化の評価には嚥下障害スコアを用いる.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top