1998 年 101 巻 3 号 p. 279-288
C-OKst による OKAN の存在はこれまで明確にされていない.今回我々は,白色背景の黒色ランダムドット刺激により OKAN の存在の確認を試みた.健康成人男女32名(平均25.9歳)に気すして立位,仰臥位,伏臥位にて延べ190回の検査を行い,赤外線 CCD カメラとコンビュータ画像解析器で記録•解析を行った.被験者の片眼にカメラを装着し,他側眼に時計回り(CW),反時計回り(CCW)の刺激を加えた.刺激中は視標追視をさせず,回転中心視のみを課した.立位,仰臥位,伏臥位での刺激中に良好な回旋性 OKN が解発した.更に刺激後,暗所開眼時の眼球運動を記録したところ,伏臥位にて最も明瞭な OKAN の解発が認められた.仰臥位でも解発を見たが,立位では不良であった.解発した OKAN はいずれの体位でもすべて頭位に対し水平性(yaw axis)で,CW 刺激後では緩徐相右向き,CCW 後では緩徐相左向きだった.回旋成分はまったく認められなかった.回旋性 OKN の緩徐増加成分(built-up)は他の報告同様認められなかった.本実験における回旋性 OKN は不随意性であり,間接経路によってのみ解発したと考えられるが,C-OKst による速度蓄積機構を介した出力は,水平性にのみ解発されるという結果であった.