日本耳鼻咽喉科学会会報
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口腔・咽頭癌における多重癌症例の検討
小川 武則松浦 一登橋本 省中野 浩佐々木 高綱洲崎 洋近藤 芳史舘田 勝朴沢 孝治高坂 知節
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1999 年 102 巻 10 号 p. 1198-1206

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抄録

頭頸部癌症例における多重癌は近年増加傾向にあるが, 特に口腔・咽頭癌では発生頻度が高く予後が悪いことが報告されており, 対策が必要である。今回, その頻度, 部位, 治療内容等について検討を行い, 今後の治療方針につき考察を行った. 対象は, 1995年6月から1998年7月までに当科にて入院加療を行った口腔癌25例・中咽頭癌14例・下咽頭癌29例の計68例であり, 検査項目として, 全例に対し上・下部消化管内視鏡検査・腹部エコー, 胸部に異常が認められた症例に対し胸部CTを施行した. 検索を行った68例中23例 (34%) に多重癌を認め, 同時性9例, 異時性14例であった. 三重癌は4例であった. 多重癌の他に, 上・下部消化管内視鏡検査にて7例に腫瘍性病変が存在し, 結局68例中16例 (24%) に何らかの同時性の異常を認めた. 多重癌の発生部位については三重癌を各々数えると, 同時性においては9例中5例 (56%), 異時性では16例中12例 (75%) にupper aerodigestive tract内での発生が集中する傾向が見られ, その中でも食道癌との合併は同時性・異時性共に多かった. 異時性多重癌における第1癌から第2癌発生までの平均期間は25.5カ月で, 14例中10例 (71%) が4年以内に発生していた. 治療面では, 同時性, 異時性いずれも各々の癌に対して高い頻度で根治的治療を行っており, Kaplan-Meier法による5年生存率曲線では多重癌のない症例, 同時性, 異時性多重癌症例の間に統計学的有意差は認められなかった. これらより, 特に治療前検索としてルゴール染色法も併せた上部消化管内視鏡検査が有用であり, また, 第1癌治療後約4年はupper aerodigestive tractを中心とした慎重な経過観察が重要であると考えられた. 更に, 各々の癌に対して根治的治療を行うことによって予後が改善する可能性があると考えられた.

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