日本耳鼻咽喉科学会会報
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内耳奇形の小児に対する人工内耳埋込術と術後成績
石田 克紀坂井 真飯田 政弘高橋 正紘内藤 明北野 庸子古賀 慶次郎
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1999 年 102 巻 12 号 p. 1300-1310

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抄録

内耳奇形を原因とする小児人工内耳症例は今後増加することが予想されるが, 本邦における報告は少なく, 詳細は不明である. そこで我々が経験した内耳奇形例について報告し, 内耳奇形の形態分類, 手術手技, 合併症, 術後聴覚, 言語獲得状況について検討した. 対象は1994年11月より1998年12月までに小児内耳奇形例に対して人工内耳埋込術を施行した5例6耳である. 奇形の種類はCommon Cavity型2例2耳とIncomplete partition型3例4耳 (うち1例はUsher症候群-I型, 1例はCHARGE Associationを含む) であった. Common Cavity型を示した2症例では外側半規管隆起に相当する部分に小開窓を行い電極コードを挿入する, いわゆる経乳突腔迷路開放術を行った. そのうちの1症例では一部の電極のC-レベルをあげると左下眼瞼皮膚の顔面痙攣を生じたため電極の反応が不安定で頻回のマップ調整を要した. Incomplete partition型を示した1症例では通常の蝸牛開窓術を行ったところ, 脳脊髄液の噴出 (CSF gusher) を認めた. 顔面神経の走行異常はいずれの症例ともみられず, 術後めまいや髄膜炎などの合併症はみられなかった. 1症例において, 1側手術後に皮弁感染を生じたため有茎皮弁による再形成を行った. しかし再び皮弁感染, 壊死を生じたため, 人工内耳を除去し, 反対耳に再挿入術を施行した.
いずれの症例でも術後の聴覚および言語獲得にはほぼ満足出来る結果を得たが, 音声表出にはまだ十分な成果を得ていない.

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