日本耳鼻咽喉科学会会報
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ブラディキニン鼻誘発反応におけるアンギオテンシン変換酵素の関与
正常者と鼻アレルギー症例の比較
後藤 穣
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1999 年 102 巻 2 号 p. 218-225

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抄録

鼻アレルギーはI型アレルギーにより発症する疾患である. アレルギー反応では, 抗原が鼻粘膜に侵入すると様々な細胞が活性化され, 種々のケミカルメディエーターを遊離し炎症担当細胞の遊走がはじまる. 本研究では, メディエーターのうち最も強い内因性の知覚神経刺激物質であるブラディキニン (BK) が, 鼻粘膜過敏性の亢進に影響を与えるかを検討した. また, アンギオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害剤を投与しBKの分解が妨げられると, 炎症反応が増強するかどうか検討した.
実験は, 正常者7人, 通年性鼻アレルギー患者7人, 計14人を対象に行った. BK100μgを鼻誘発し, 鼻汁および洗浄液中のアルブミン, リゾチーム, 総蛋白の変化から血管透過性, 腺分泌 (漿液腺) の変化を検討した. 同様の方法で, ACE阻害剤を前投与した場合の実験も行った.
鼻アレルギー患者は, BK誘発により鼻粘膜血管透過性および腺分泌が亢進し, 鼻腔洗浄液中にアルブミンとリゾチームが増加した. ACE阻害剤の前投与によって, この傾向はさらに顕著になった. 鼻アレルギー患者はBK誘発に対する反応性が高く, 抗原に暴露され産生されるBKが, 血管透過性を亢進させ鼻閉や鼻汁分泌などの鼻症状を修飾していると考えられた. さらにACEが減少すれば, 血管透過性が亢進してアレルギー反応が遷延化し, 鼻症状が増悪する可能性が示唆された.

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