骨導域値上昇を伴う急性中耳炎11例12耳を経験し報告した. 対象症例は, 1996年11月から1997年5月までの7カ月間に当科外来を受診した成人の急性中耳炎のうち, 20dB以上の骨導域値上昇を3周波数以上に認めたものを対象とした. 症例は, 男性8例9耳, 女性3例3耳の計11例, 12耳であり, 年齢は19歳から70歳 (平均47.7歳) であった. 聴力障害については, 治癒9例 (10耳), 著明回復1例 (1耳), 回復1例 (1耳) と予後は良好のものが多かったが, 感音性難聴が残存するものもあった. 7耳で耳漏細菌検査を行い, そのうちの3耳が, ペニシリン耐性肺炎球菌が起炎菌と考えられた. 急性中耳炎では, 骨導域値上昇を伴う例もあるので, 積極的な聴力検査が必要と思われた. またその起因菌として種々の耐性菌が関与している可能性があることから, 以前にも増して細菌検査の必要性が示唆された. また, 耳漏のみられない例では, 細菌検査の面からも積極的な鼓膜切開の施行が必要であると思われた.