日本耳鼻咽喉科学会会報
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反復する急性中耳炎と起炎菌の同一性に関する検討
末武 光子入間田 美保子高橋 辰大山 健二生方 公子
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2000 年 103 巻 1 号 p. 19-23

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抄録

乳幼児反復性中耳炎の起炎菌が毎回異なる菌株によるものか,同一の菌によるものかを検討した.
8週間以内の間隔で急性化膿性中耳炎を反復した3歳以下の乳幼児70人を対象とし,述べ282回の急性化膿性中耳炎の起炎菌を調べた.各エピソードごとに耳漏(または中耳貯留液)と鼻咽腔ぬぐい液とペアで採取し,細菌検査,MIC測定を行い,肺炎球菌については血清型,pbp遺伝子,ermAM,mefE遺伝子を検索した.これらの1つでも異なれば違う菌株と判定した.
起炎菌はPSSP(Penicillin sonsiliec S.pneumoniae)26株,PISP(Penicillin inscnsitice S.pneumoniae)65株,PRSP(Penicillin resistant S. pneumoniae)50株で肺炎球菌が全体の約50%を占めた.次いでインフルエンザ菌が多く,感性菌65株,BLNAR(β-lactamase negative ampicillin resistant H. influenzae)27株,β-ラクタマーゼ産生株17株であった.連続する2回の急性中耳炎を1組とし
た計202組のうち,150組(74%)において,2回目の急性中耳炎は1回目とは異なる菌によって引き起こされていた.PISP,PRSPが連続して起炎菌であった症例でも,22組中15組(68%)で菌株は異なっていた.以上より反復性中耳炎では基本的に毎回起炎菌が異なり,耐性肺炎球菌の場合も特異的に上咽頭に残って急性中耳炎を反復するのではなく,多くの場合その都度異なる菌株に感染すると考えられた.

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