日本耳鼻咽喉科学会会報
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スギ花粉症とoral allergy syndrome(OAS)
石田 孝村井 和夫安田 豊稔佐藤 貴恵瀬島 尊之喜多 村健
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2000 年 103 巻 3 号 p. 199-205

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抄録

花粉症患者のうち,新鮮な果実や野菜を摂取後に口唇の発赤•浮腫や咽頭掻痒感などを生じることがある.これをoral allergy syndrome(OAS)とよび,北欧ではシラカンバ花粉症にリンゴなどのバラ科果実によるOASの合併が知られている.一方,日本でもっとも多いスギ花粉症との関係についての報告はほとんどない.今回スギ花粉症患者の中で,問診からOASと診断された23例を対象に検討を行った.
症状は个例,咽頭の掻痒感やイガイガ感であり,喉頭浮腫やアナフィラキシー症状を訴える例は認めなかった.

原因果実としては,メロンがもつとも多く,次いでリンゴ,モモ,キウイの順であった.シラカンバ花粉症とバラ科果実のような明らかな関係は認められなかった.多くの例で2個以上の果実に過敏性を認めた.
特異IgE抗体価の測定では,スギ花粉の他にシラカンバ花粉に対する特異IgE抗体価陽性例を多く認めた.一方,果実に対するIgE抗体価では,リンゴの陽性率が高いのに比べ,メロンでは全例陰性であり,新鮮な果汁を用いた皮膚テストでの確認が必要と思われた.
スギ花粉症患者でOASの合併が疑われた場合にはシラカンバ花粉とリンゴに対するIgE抗体価の測定が有用と思われた.
今回,問診ではじめてOASに気づいた例もあり,問診を注意深く行うことでOASを合併した患者の頻度が高くなるものと思われた.

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