2000 年 103 巻 7 号 p. 803-811
1971年から1995年の期間に癌研究会附属病院頭頸科で根治的治療を施行した中咽頭扁平上皮癌217例を対象に,リンパ節転移に対する治療方針について検討した.217例のN分類は,N0:83例,N1:42例,N2a:23例,N2b:27例,N2c:33例,N3:9例で,初診時頸部リンパ節転移を認めたのは134例(61.8%)であった.転移部位としは,上頸部が圧倒的に多く128例にみられた.次いで中頸部47例,健側.上頸部31例,下頸部21例の順で多かった.顎下部(オトガイ下部を含む)は8例,後頸蔀は5例,前頸部は1例とこれらの部位への転移は少なかった.咽頭後リンパ節転移は初診時7例にみられた.N stage別の頸部制御率はN0:96.9%,N1:90.0%,N2a:76.5%,N2b:62.5%,N2c:30.5%,N3:0%であった.N1については,原発巣が放射線冶療で制御可能な場合,頸部も根治照射の適応としてよいと考えた.N2では頸部郭清を原則とすべきであるが,原発巣とともに照射で消失した場合は経過を厳重に観察して判断する.N3には残念ながら有効な治療法は見いだせなかった.頸部郭清の範囲は,予防的郭清の場合,上,中頸部の郭清が最も重要で,原発巣が口腔に進展する場合は顎下部を加え,喉頭,下咽頭に進展する場合には下頸部を加えるという方針が現時点では妥当と考えた.術式としては,予防的郭清で節部に変形や機能障害を残してはならず,機能保存的郭清術を行うべきである.N1に対してはN0に準じた方針でほぼ問題ないが,術中に多発転移が判明した場合は全頸部を郭清する.N2以上に対しては郭清範囲の縮小よりも郭清の徹底を優先するが,今後いわゆる保存的郭清の適応は拡たされる方向にあると思われる.