日本耳鼻咽喉科学会会報
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アレルギー性鼻炎における下甲介粘膜中の肥満細胞 種類別浸潤の特徴
下甲介化学剤手術の治療効果
鈴木 立俊八尾 和雄岡本 牧人
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2000 年 103 巻 9 号 p. 1007-1014

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抄録

アレルギー性鼻炎の病態解明および治療効果の評価には,鼻粘膜中に浸潤している各腫細胞を観察することが一つの方法である.そこで通年性アレルギー性鼻炎の下甲介粘膜中の肥満腫胞に着目し,その細胞中に含まれるトリプターゼとキマーゼを酵業抗体二重染色法で分別しそれらの細胞浸潤の特徴を検討するとともに,トリクロール酢酸(TCA)による下甲介化学剤手術後の粘膜内細胞浸潤数を定量し,この治療法の有効性を示した.対象は通年性アレルギー性鼻炎と鼻中隔弯曲症を含併した症例で,十分な説明と納得の後,本人の希望に従って鼻中隔弯曲の凹側のみをTCAで治療したものの改善がみられなかった症例の内,再度の説明と本人の納得のもとに鼻中隔矯正術と下甲介切除術を行った15例の両側下甲介標本である.すなわち同一個体の非治療側を対照として治療側と比較を行った.結果は非治療側ではトリプターゼ単独陽性肥満細胞(MCT)は粘膜上皮基底膜側に多数存在し,特に杯細胞化した上皮層には密に存在した.また粘膜固有層の腺組織,血管周囲にも認められた.トリプターゼ•キマーゼ両陽性肥満細胞(MCTC)は粘膜固有層に多数認められ,粘膜上皮層にも散見された.TCA治療を受けた上皮層ではMCTの存在はわずかで,粘膜固有層中のMCTCは散在するのみであった.定量的結果は上皮層の肥満細胞数は,治療側で有意に減少していた(p<0.05).また治療側の固有層ではMCTおよびMCTC数それぞれが非治療側に比べ有意に減少していて(p<0.01),両者を合わせた肥満細胞数も治療側で有意に減少していた(p<0.05).
以上よりアレルギー性鼻炎粘膜中の肥満細胞浸潤の特徴より,MCTはI型アレルギーの症状発現に第に関与し,MCTCはその後の組織修復に関与していると考えた.またこれらの細胞浸潤数に対する統計学的検討で,TCA治療が有効であると結論した.

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