日本耳鼻咽喉科学会会報
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甲状腺良性腫瘍のクリニカルパス
近藤 毅冨田 吉信
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2001 年 104 巻 10 号 p. 1017-1024

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抄録

近年, 医療の質の向上, 医療費の効率的使用, 在院日数の短縮が提唱されており, そのためにクリニカルパスを用いたチーム医療が注目されている. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域でも, すでにいくつかの医療施設が両口蓋扁桃摘出術, 鼓室形成術, 上顎洞篩骨洞根治術などに対しクリニカルパスを作成し, 導入しているが, 我々の検索し得た限りでは頭頸部腫瘍に対するクリニカルパスを作成し, 導入施行した報告はみられない. 今回我々は, 頭頸部腫瘍の中でもクリニカルパス導入が比較的容易と思われる甲状腺腫瘍のクリニカルパスを作成・導入し, その結果について検討した.
当科では平成12年4月から甲状腺良性腫瘍のクリニカルパスを作成・導入し, 術前に諸検査で良性と思われた甲状腺腫瘍患者14例に対して使用し, 併せて医師・看護婦にクリニカルパス使用後のアンケート調査を行った. その結果, 高血圧症合併により血圧測定の回数を増加させた症例が存在したが, クリニカルパスを中止せざるを得ないような大きなヴァリアンスは発生しなかった. クリニカルパスの利点として, (1) クリニカルパス導入前の在院日数が平均18.7日であったのに対し, 導入後は14.5日と4.2日間短縮した, (2) 新人スタッフの教育として使用することができたこと, があげられる.
腫瘍性疾患はヴァリアンスが多いことからクリニカルパスはあくまで基本であり, 患者によって治療経過には個人差があることを, 患者にも医療スタッフにも教育し十分理解させる必要があると思われた. また, クリニカルパスはその時点での標準・基本であるため, 随時または定期的に見直す必要があると考えられた.

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