日本耳鼻咽喉科学会会報
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医療経済からみた舌・中咽頭癌進行例に対するNeoadjuvant Chemotherapyの検討
藤井 正人山下 拓石黒 隆一郎田代 昌継大野 芳裕
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2001 年 104 巻 6 号 p. 668-674

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抄録

頭頸部癌集学的治療におけるNeoadjuvant Chemotherapy (NAC) を医療経済の面から検討した.
対象は1993年1月より1996年12月までに当院で初回治療を行ったstageIII, IVの舌, 中咽頭扁平上皮癌症例22例で, これらに対してNACとしてCDDP, 5-FU併用療法を1コース行いPR以上の効果が得られた場合に1コース追加し根治的放射線療法60Gy, またはカルボプラチン併用多分割照射72Gyを行った. NACがNC以下の場合は根治手術を行った.
通常の放射線療法を施行した4例 (NAC照射群) と多分割照射を施行した9例 (NAC多分割照射群), 及びNACの後再建術を伴う拡大全摘術を施行した9例 (NAC手術群) に対して各々の入院期間, 医療費につき検討した. 平均入院期間はNAC照射群で89.3日, NAC多分割照射群で92.0日, NAC手術群で113.3日であった. 平均医療費は各々238700点, 264846点, 459468点であり, その中で化学療法の占める費用は各々38473点で16.5%, 44802点で16.9%, 23451点, 5.1%であった. 化学療法とそれに伴う画像診断, 検査, 化学療法前後の看護料などの費用を合わせると各々130196点54.5%, 150046点55.7%, 113839点24.8%となり大きな割合を示した.
これらから, NACの医療費に占める割合は臓器機能温存治療ではその約半分を占めることが判明し, 今後は機能温存によって得られるQOLの評価を行い費用-効用分析を行うことによってこれらの医療費を評価すべきと考える. 一方, NAC手術群では, 他の群と比較して医療費が高額で入院期間も長く, 手術を施行する場合のNACは医療経済上の問題が多いと考えられる. 今後はNACの効果をあらかじめ判断する手法を開発し化学療法感受性に基づいてNAC施行症例を選択することが必要と考えられる.

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