日本耳鼻咽喉科学会会報
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歪成分耳音響放射検査におけるOAEスクリーナー (GSI 70) の信頼性に関する検討
松村 道哉千田 英二須藤 敏福田 諭柏村 正明黒田 努大渡 隆一郎犬山 征夫
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2001 年 104 巻 7 号 p. 721-727

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抄録

歪成分耳音響放射 (DPOAE) のスクリーニング用に開発されたGrason-Stadler社製GSI 70は, 国内に導入されて間もないためその有用性の検討はいまだ十分には行われていないのが現状である. そのため今回, 1999年12月から2000年6月まで当科外来でGSI 70にてDPOAEを測定した123耳 (年齢0~64歳, 平均13歳, 女性84耳, 男性39耳) を対象とし, 純音聴力, ABR閾値, Otodynamics社製ILO 92で測定した結果との比較検討を行った. その結果GSI 70とILO 92でのDPOAEの測定結果は, 相関係数が2kHzで0.773, 4kHzで0.813といずれも高い相関を認めた. 成人例の純音聴力との比較では2kHzで感度80%, 特異度94%で4kHzにおいても感度100%, 特異度94%と満足できる結果であった. 乳幼児例のABR閾値との比較では2kHzでは感度100%, 特異度97%で4kHzでは感度100%, 特異度94%の結果であり成人例と同様に乳幼児例においても良好な結果が得られた. また機能性難聴と診断された8耳においてDPOAEはいずれも良好な反応を呈した. しかし成人例の2kHzのスケールアウトの聴力で正常と判定された症例が1耳存在し判定基準の再検討の必要性が認められた. 本検討によりGSI 70ではより簡便, 短時間にDPOAEの測定が可能であり, 一般外来で聴覚検査の一つとして他覚的に聴力を評価する上で有用性が高いと考えられた.

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