日本耳鼻咽喉科学会会報
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耳硬化症術後長期成績の検討
植田 広海
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2002 年 105 巻 10 号 p. 1071-1077

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抄録

耳硬化症にてアブミ骨手術施行した症例の長期術後聴力成績を調査し,手術せずに聴力経過観察した症例と比較検討した.またアブミ骨手術法別の長期聴力経過についても検討した.
対象は,1979年より1995年までの間に受診し,少なくとも一側手術で耳硬化症と確認し5年以上経過観察出来た51人(男性22人女性29人)88耳である.これらを非手術群(31耳),スタペデクトミー+ワイヤループ使用群(Total stapedectomy群;TS群と呼称,19耳),スタペドトミー+ワイヤピストン使用群(Small fenestra stapedectomy群;SFS群と呼称,38耳)に分けて聴力を比較した.
非手術群においては,最終気導聴力が全周波数にわたって悪化したが,高音域の悪化は骨導聴力の悪化が主体であった.TS群においては,アブミ骨手術後最終聴力において術直後よりかなりの悪化をみた.SFS群においては,アブミ骨手術後最終聴力では,8kHzを除いて悪化は軽度であった.
年換算による各群の周波数別の聴力変化を検討すると50歳以下の年齢層では,気導聴力で,250Hz,500Hzにおいて非手術群より有意にSFS群で聴力悪化が軽度であった.一方,骨導聴力では,1kHzにおいては非手術群,TS群両群より有意にSFS群において聴力悪化が軽度であった.51歳以上の年齢層では,ほぼ同様の傾向を認めるものの気導,骨導聴力共に有意差を認めなかった.
以上より,長期聴力成績の面からもアブミ骨手術特にスタペドトミー+ワイヤピストン使用という手術法が有用であるという結論が得られた.

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