日本耳鼻咽喉科学会会報
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大唾液腺腫瘍診断における吸引細胞診の役割
岡香 澄近松 一朗江浦 正郎桂 文裕湯本 英二徳永 英博
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キーワード: 組織診断, 唾液腺腫瘍
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2002 年 105 巻 11 号 p. 1109-1115

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抄録

最近5年間に当科で術前診断を目的として吸引細胞診(FNAB)を施行した大唾液腺疾患未治療例で,切開生検あるいは手術によって病理組織診断が確定した93症例(耳下腺69例,顎下腺24例)についてFNABの結果と病理組織診断を比較検討した.正診率は88.5%,敏感度は53.3%,特異度は95.8%であり,良性疾患に関してFNABは有用であると思われた.悪性腫瘍例の偽陰性は5例で扁平上皮癌,多形腺腫内癌腫,悪性リンパ腫,粘表皮癌低悪性型,腺房細胞癌の各1例であった.前2者の偽陰性は穿刺部位の不正確さによるものと考えられ,後3者では,穿刺部位,標本ともに問題はなかったが,細胞の異型性に乏しく,FNABにおける悪性の診断は困難であった.理学所見,画像所見から,特に悪性リンパ腫が疑われる症例ではFNABに依存せず,切開生検にて速やかに組織診断を行うべきと思われた.一方,偽陽性例は筋上皮腫の1例で,筋状構造を示し,内部に粘液様物質を含んでいたため,腺様嚢胞癌と診断された.FNAB所見での筋上皮腫と腺様嚢胞癌の鑑別に留意すべきと思われた.偽陰性を減らすべく,確実に病変部を穿刺すること,病歴,理学的所見,画像診断等,諸検査の結果とFNABの結果が一致しない場合,FNABの再検を検討する,または,術中迅速病理検査を行うことが重要であると思われた.

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