日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
新潟水俣病 (有機水銀中毒症) の神経耳科学的長期追跡調査
水越 鉄理渡辺 行雄將積 日出夫麻生 伸浅井 正嗣犬飼 賢也高橋 姿
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 105 巻 3 号 p. 225-231

詳細
抄録

1965年新潟阿賀野川地区に発生したメチル水銀中毒症は新潟水俣病として, 熊本の水俣病とともに公害病に認定され, 神経耳科学的に長期にわたって追跡調査されてきた.
今回, 私共はこれらの新潟水俣病と認定された患者の中, 申請時 (1968-78) から2回以上の追跡調査 (1980-1987, 1991-2000) がなされた症例36例を中心に, 神経耳科学的にその長期の推移を検討し得たので, その大要を報告した.
1) 神経耳科学的に, 聴力の悪化は高齢化の影響も見られるが, 比較的軽度 (33%, 72耳中24耳) であった. 2) 平衡機能障害では自発眼振 (注視眼振), 温度眼振反応, 視運動性眼振の増悪が著明 (36%, 47%, 44%) であった. 3) 体平衡障害の増悪は比較的軽度 (28%) であった.
以上の追跡所見は個人差が著しく, 中毒症の増悪, 長期化に伴う所見か高齢化の影響による所見かについては不明であった.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top