日本耳鼻咽喉科学会会報
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原発性上皮小体機能亢進症26例に対する手術成績の検討
水足 邦雄斉藤 秀行小澤 宏之稲垣 康治井上 貴博
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2003 年 106 巻 12 号 p. 1121-1126

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抄録

原発性上皮小体機能亢進症に対して手術を施行した26例について,術前後の血清カルシウム,HS-PTH濃度の変化,および摘出標本の病理型による差異を中心に報告する.対象は平成5年4月より平成13年10月までに当科で手術を施行した26例で,これらの中に明らかな家族性高カルシウム血症,多発性内分泌腺腫症,悪性腫瘍合併症例は1例もなかった.全例,術前の画像診断にて1腺のみの腫大が認められ,全身麻酔下にて腫大腺のみの摘出を行った.その際,健側頸部の検索や.正常腺の生検は行わなかった.術後,全例で臨床症状の軽快を認め,また再手術例や永続的低カルシウム血症は生じていない.術後の血清カルシウム,HS-PTH濃度は有意に減少していた.また,永久病理標本による病理診断により腺腫群(n=16)と過形成群(n=8)の2群に分類したところ,両群とも血清カルシウム,HS-PTH濃度ともに有意に減少していた.さらに術後6カ月のHS-PTH濃度は腺腫群,過形成群で有意差を認めなかった.過形成群では術後1カ月と術後2年のHS-PTH濃度に有意差を認めなかった.その結果,家族性高カルシウム血症や多発性内分泌腺腫症のない症例で,術前の画像診断にて1腺のみの病変が疑われたものについては,腫大腺のみの摘出が腺腫,過形成の病理型によらず良好な成績を上げることが出来ると思われた.また,この術式では術後の永続的低カルシウム血症を防止できると考えられた.

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