日本耳鼻咽喉科学会会報
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口腔咽頭癌NO症例に対するセンチネルリンパ節
症例の総括と有用性, 問題点
大野 芳裕甲能 直幸金谷 毅夫中村 和隆田部 哲也北原 哲小須田 茂
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2005 年 108 巻 5 号 p. 522-527

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抄録

口腔咽頭扁平上皮癌T2, T3NOの13症例を対象にセンチネルリンパ節 (SLN) の検索を行い, その有用性や問題点について検討した. 舌癌が10例, 舌以外の口腔癌が2例, 中咽頭癌が1例で, T2が11例, T3が2例であった. 手術前日に腫瘍周囲の粘膜下にTracerを注入し, 2時間後にシンチグラムを施行した. 手術当日ガンマプローブ (GP) を用いてSLNを同定し, 原発巣切除とSLNを含む頸部郭清術を施行した. 摘出したリンパ節の放射活性をオートウエルカンターで測定し, 病理学的にリンパ節転移の有無を検索した. SLNは全例で同定され, 頸部リンパ節転移を認めた症例は4例で, いずれもSLNへの転移を認めた. Sentinel node conceptは頭頸部癌でも成立し, Sentinel node navigation surgery (SNNS) を施行する価値があるものと思われた. SNNSを施行することにより, 6-7割程度の症例においては頸部郭清術が不要となり, 患者のQOLが向上して医療費の節減にもつながる. Tracerにはスズコロイドとフチン酸を用いたが, 今回の検討ではフチン酸の方が優れていると考えられた. Shine throughの影響を避けるため, SLNシンチグラム撮像時にはいくつかの方向から撮像する必要があり, GPで放射活性を測定する場合にも, 工夫が必要であると思われた. SLNの検索は, 個々の症例のリンパ流を反映し, リンパ節転移のマッピングができる利点があるため, 予防的頸部郭清の郭清範囲を決定する上でも応用可能であると思われた.

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