日本耳鼻咽喉科学会会報
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甲状軟骨形成術I型と披裂軟骨内転術の同時手術における筋突起の牽引方法について
笹井 久徳渡邊 雄介宮原 裕久保 武
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2006 年 109 巻 12 号 p. 830-834

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抄録

(目的)披裂軟骨内転術は片側喉頭麻痺の外科治療として広く知られており,患側披裂軟骨筋突起に糸をかけ甲状披裂筋と外側輪状披裂筋(LCA)の集約方向に牽引する術式である.ただ原法の牽引方向では甲状軟骨形成術I型の併用を必要とする際,牽引糸がI型の窓枠に干渉し両術式の併用が困難であることも多い.今回我々は筋突起にかけた糸の牽引方向を原法とは異なりLCAに沿ってのみ牽引することで両術式の併用時における有用性と効果について調べた.
(方法)筋突起へのアプローチは原法に従い行うが,あえて輪状披裂関節は開放せず,筋突起またはLCAの筋突起付着部に糸をかけた.併用する甲状軟骨形成術I型の窓枠を用いてLCAの走行を推定し牽引を行った.甲状軟骨形成術I型の充填材料としてはゴアテックスを用いた.
(結果)片側喉頭麻痺患者30名に対し行い,全例において術後MPT延長を認め,術前平均6.0秒が術後平均17.9秒と改善した.術後呼吸困難などの合併症は全例において認めなかった.
(結論)LCAの走行に沿って牽引することで患側披裂軟骨のレベル差の矯正が可能であり,かつ甲状軟骨形成術I型との併用が非常に容易であった.両術式の併用を必要とする高度な声門間隙を有する片側喉頭麻痺患者において非常に有用な方法であると考えられた.

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