日本耳鼻咽喉科学会会報
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胸骨正中切開による縦隔廓清術の経験
斉藤 成司村上 泰宇津見 瑞雄
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1969 年 72 巻 4 号 p. 902-912

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抄録

頸部下部, Mediastinum上部の原発性悪性腫瘍や, 喉頭全摘, 頸部廓清術後の, この領域への再発は, 通常の外科的療法の適応外と考えられてきた. 頸部廓清術と放射線療法の併用が, この様な状態の適応と考えられてきたが, その結果は通常不幸なものであることが多い.
最近我々は, この領域の悪性腫瘍で頸部手術につづいて, 縦隔廓清術を施行した4症例を経験したのでここに報告し, 若干の考察を加えた.
第1例は, 32才の男子で, 右声帯の線維肉腫であり, 喉頭全摘術を行なうも, 気管断端に再三局所再発をくり返し, 当手術を試みた. 術後4カ月気管断端よりの大出血にて死亡した.
第2例は, 24才男性, 気管の〓腫様類腺癌であり, 当手術を行なうも, 術後8カ月, 気管断端に再発を認め, 放射線療法を加えるも左総頸動脈の気管壁への穿孔による大出血にて死亡した.
第3例は, 65才男性で, 右側声門下より仮声帯に至る癌腫, 右頸上部リンパ節転移にて喉頭全摘, 右頸部廓清術後4カ月, 左頸部リンパ節及び, 左甲状腺部に転移を認め, 下方への癌の進展が予想されたので, 本術式を施行したが, 術前より脳血管系の障害もあった為, 術後10日死亡した.
第4例は, 58才女性の頸部食道癌にて, 喉頭, 頸部食道全剔除, 並びに左頸部廓清術を行ない, 同時に本術式も加えた. 術前より投与していた抗癌剤の副作用も加わり. 術後40日全身衰弱の為死亡した.
我々の症例では, その予後に関する成績は良好とは云えないが, 今後手術手枝の問題, 術後管理の問題など, 今後症例を重ねて改善されねばならぬと考える.

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