日本耳鼻咽喉科学会会報
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ヒトの蝸牛電位 (cochlear microphonics) の非手術的記録法
山浦 一男
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1970 年 73 巻 2 号 p. 154-177

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抄録

医用電子計算機の加算平均法を応用してヒトの外耳道及び鼓室岬角部より非手術的に蝸牛電気生理学的反応 (CM, AP, SP) を記録した.
特に鼓室誘導法はS/N比, 精度など手術的正円窓誘導法に匹敵した. 音刺激には連続純音 (500Hz~1000Hz)及び短音を用いた.
正常者12名, 伝音系難聴患者6名, 内耳性難聴患者26名, 計44名の被検者に対して蝸牛電気生理学的反応 (特にCM) の記録を行い, それぞれのCM特性曲線を求め検討した結果下記の結論を得た.
1) 鼓室誘導法及び外耳道誘導法いずれの場合も高度難聴 (90dB 以上) を除くすべての被検者よりCM反応を得ることができた.
2) 短音刺激時は鼓室誘導では, CM, AP, SPの合成反応, 外耳道誘導ではCM, APの合成反応が得られた.
3) 正常者の連続純音に対するCM特性曲線は, 鼓室誘導では音圧と線型関係にあり正円窓誘導のCM特性曲線と近似したものが得られた. 外耳道誘導のCM特性曲線は音圧に対して非線型の複雑な関係にあつた.
4) 伝音系難聴のCM特性曲線はオージオグラムの聴力損失の程度に比例して, 右方移動を示した.
5) 内耳性難聴のCM特性曲線は正常型と異常型に分類できた. 正常型は正常耳と同様のパターンを示したものであり, 異常型は, CM振副の減少, 右方移動, 非線型化を示したものである. 内耳性難聴のオージオグラムパターンとCM特性頗線変化パターンとの相関関係についての結論は出せなかつた.

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