日本耳鼻咽喉科学会会報
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喉頭軟骨の微細構造と喉頭筋
特に輪状軟骨及び披裂軟骨の力学的考察
北島 清治
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1972 年 75 巻 11 号 p. 1263-1273

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抄録

目的: 人間の喉頭の発声機能を解明する補助手段の一つとして, 人間喉頭軟骨の軟骨内化骨による骨梁の構築と, これに附着する喉頭筋との力学的関係を検討した.
研究方法: 研究材料は人の屍体から摘出した喉頭を用いた. 先ず喉頭軟骨の表面に, 細い鋼鉄針で墨汁を穿刺注入した. そして軟骨表面に出来た罅隙線を観察した. 次いで喉頭軟骨をソフテックスでレ線撮影し, 化骨の状態及び骨梁の走行構築を観察した. 最後に輪状軟骨, 披裂軟骨に附着する内喉頭筋のの数と, 太さを計測し, 骨梁と喉頭筋の力学的関係を検討した.
結果: 輪状披裂関節を中心とした輪状軟骨, 披裂軟骨の罅隙線の走行と, ソフテックス「レ」線像にみられた網目状陰影として認められた化骨骨梁を比較観察して見た. その所見は, 両者共に, 関節面ではそれをつつむように並走する骨梁と, 関節面を中心として, それに直角方向に放射状に走る骨梁とが交叉するのを認めた. この構造はそれらの軟骨に附着する筋肉の牽引や廻転に対して, 十分強力な支持構造になっている. このことは, 輪状披裂関節における披裂軟骨が, その運動に直接関与する7つの筋肉, 即ち, 内外の甲状披裂筋, 後輪状披裂筋, 横斜の披裂筋, 外側輪状披裂筋, 披裂喉頭蓋筋の力を受けとめて, 複雑で強力な不断の運動に対し, 十分適応出来る極めて合理的な補強構築であることを示した.

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