日本耳鼻咽喉科学会会報
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側頸部腫瘍の超音波診断
浅野 尚北村 武金子 敏郎小林 伸行内藤 準哉
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1972 年 75 巻 12 号 p. 1399-1407

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抄録

一般に頸部腫瘤は,その好発部位,性状,周囲との関連,年令,性などによつて臨床診断が可能になる場合が多いと云う.しかし腫瘍と周囲組織との関係は一様ではなく複雑な様相を呈していることが多い.特に側頸嚢腫,鰓原性腫瘍,類皮嚢胞等血管と深くかかわり合つて存在する場合が多く,又癌の頸部リンパ節転移も多くは内頸静脈に沿つて出現する.従つてこれらの腫瘍を剔出する際には血管との関係を充分考慮しながら行わねばならない.術前に腫瘍と血管との関係が知れれば手術の際非常に参考になるわけである.
そこで今回我々は側頸部腫瘍と血管との関係を明らかにする目的で超音波パルスB-mode法により側頸部の超音波断層を行なつた.
2.実験法
2.25MHz 30mmφの凹面探触子を用いて行なつた.被検者を仰臥位とし,頭部を健側に向かせて患側頸部を広く,しかも皮膚面が水平になるように体位を調節し,その上に脱気水を入れた水槽を接着させ,探触子を水中で掃引させた.掃引の方法は,腫瘍上を横に直線的に掃引し(linear scan),必要に応じてsector scanを組合せたcompound scanも行なつた.更に装置にattenuator(減衰器)を接続し超音波感度断層を行ない腫瘍の良性悪性もあわせて鑑別した.
3.結果
正常者の側頸部超音波断層では,皮膚エコーに接してその直下に胸鎖乳突筋エコーが描かれ,それよりやや内側深部に2つの血管エコーが描かれた.1つは楕円形で頸静脈エコーであり,他の1つはほぼ円形で頸動脈エコーである.頸動脈エコーは減衰を強くしていつても最後まで残り,他組織にくらべて強いecho sourceであることがわかつた.
側頸部腫瘍7例について超音波断層を行なつた.症例は鰓原性嚢腫,頸部リンパ節結核,副甲状腺乳頭状腺癌,類皮嚢腫,悪性リンパ腫,喉頭癌及び舌癌の頸部リンパ節転移である.このうち舌癌のリンパ節転移を除いた他の6例に血管像を描くことが出来た.又この血管像と腫瘍エコーの位置的関係が手術所見と非常によく一致していた.血管像の描かれなかつた例では,手術時,転移リンパ節が頸静脈と強く癒着し,頸動脈壁にも癌の浸潤が認められた点他の6例と大いに異なつた所見を呈していた.
内外頸動脈は正常例では夫々別個に描写されたが,今回の症例では全例描写され得なかつた.理論的には充分とらえられるだけの大きさを持つているのであるから.掃引の方法,条件の設定及び装置の分解能に問題があると考えられた.

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