日本耳鼻咽喉科学会会報
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学童嗄声についての観察
前川 彦右ヱ門伊藤 督夫渡辺 とし子文 英一
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1973 年 76 巻 12 号 p. 1459-1471

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抄録

1. 目的:小児嗄声の問題は最近,学校保健の立場から,大気汚染との関係から,更をこは喉頭微細手術の適応を考える上で注目を集めている.
我々は,未知の課題の多いこの小児嗄声の本態を明らかにする手掛りとして,先づ学童嗄声の実態調査を行なつた.
2. 方法:大阪市内5小学校全児童4,138名について音声言語治療に携わる教員の聴覚印象による選別を行なつた.嗄声ありと判断された児童について耳鼻咽喉検査•音声機能検査な行なつた.
3. 結果:
1) 嗄声発現率は6.3%で,そのうち中等度のもの1.4%,軽度のもの4.9%であつた.
2) 男児に多く(男4:女1),学年別では6年生において低率であつた.
3) 工業地区,住宅地区に比して,市中心部に高率に認められた.
4) 身体発育の面では,嗄声児と正常児との間には差違は認められなかつた.
5) 声帯所見は,54%が軽度変化,25%が浮腫性病変であるのに対し,結節性病変は13%に過ぎなかつた.
6) 浮腫性病変は男児にやや多く,また3年生にやや多かつた.結節性病変は市中心部でやや多かつた.
7) 嗄声の程度と声帯所見の間には相関が認められ,殊に浮腫性病変ではひどい嗄声が多くみられた.
8) 音声機能検査(呼気乱費係数,声の強さおよびソナグラフ)の結果では,嗄声児と正常音声児の間に一定の傾向を認めることができなかつた.

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