日本耳鼻咽喉科学会会報
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Ethacrynic acid投与による血管条の変化の電顕的観察
笠島 和子
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1973 年 76 巻 3 号 p. 338-346

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抄録

1. 目的
著者は利尿剤であるethacrynic acid (EA)を静注した際のモルモットにおける蝸牛管,特に血管条の形態的変化を,主として透過型及び走査型電子顕微鏡を用いて観察した.またhorseradish peroxidase (HRP)を追跡子として血管条の毛細血管の透過性の変化を電顕的に観察した.そしてEAによる血管条の障害過程の電顕的観察結果にもとづきこの聴器毒の作用機序について考察を加えた.
2. 方法
プライエル反射正常のモルモツト29匹(対照群10匹,EA群19匹)を実験対照とした.EAは50mg/kgを無麻酔下に静注し,10分から4時間後に断頭し固定した.HRPは対照群3匹,EA群7匹に対して100~200mg/kgな静注し5分から15分後に断頭固定しベソチジン反応を行つた.蝸牛は摘出後グルタールアルデヒド及びオスミウム酸にて固定し電顕試料を作成し,透過型及び走査型電子顕微鏡で観察した.
3. 結果
1) EAによる血管条の変化はかなりの個体差があるがおおむね静注後10分で認められ,1時間目で最も強い変化を示し3時間,4時間目でほぼ回復した.
2) 血管条の変化は,血管内皮細胞に始まり,中間細胞,辺縁細胞,基底細胞と進行し,同時に広い細胞間隙を生じ全体が浮腫状となる.EA静注後1時間では中間細胞の強い障害像と共に辺縁細胞に特徴的な変性を認めた.すなわち辺縁細胞の多くは変性して濃縮する.しかしライスネル膜,ラセン隆起の境界付近では特異な膨化像を示す変性細胞が認められた.走査電顕像ではこれら細胞の表面欠損が見られ,またこれら細胞間解離を認めた.
3) HRPを静注すると無処置動物血管条では毛細血管内皮細胞よりpinocytosisで漏出し,HRPは細胞間隙に存在し,中間細胞に取り込まれる.しかしEA静注後1時間ではHRPは血管外には漏出しないが,2時間,3時間では再び正常の如く血管外に認められた.
4) EAはほぼHRPが無処置動物血管条で通過した経路をたどり血管壁,中間細胞,辺縁細胞,基底細胞などに直接作用して細胞変性をおこすものと考えられる.同時にまた血管透過性も障害されるが,これが血管条の変化を一層高度にしているものと考えられる.

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