日本耳鼻咽喉科学会会報
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日本人胎児における中耳発生
主としてアブミ骨について
近藤 穣
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1973 年 76 巻 8 号 p. 929-939

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抄録

1. 目的:日本人胎児における中耳発生について,主として,そのアブミ骨の発生について検索しようと試みた.
2. 実験法:人工妊娠中絶によつて得られた日本人胎児10胎について,頭部の連続組織切片標本を製作した.それらの全標本について,実体顕微鏡にて,組織学的検索を行い,耳小骨の発生学的観察を行つた.
3. 結果:
a. 胎生初期には,ツチ骨とキヌタ骨は,一つの細胞群として認められ,Meckel氏軟骨の方がツチ骨,キヌタ骨の細胞群より早く発現したと推定される.
b. ツチ骨とキヌタ骨は,上記細胞群の中から,同じ時期に発生したと推定される.
C. ツチ骨,キヌタ骨とアブミ骨は異なる原基から発生したものと推定される.また,ツチ骨,キヌタ骨の方がアブミ骨より早く発生したと思われる.
d. アブミ骨の脚と足板部の中耳側層とは同じ原基(Reichert氏軟骨)から発生すると推定される.
e. アブミ骨足板部の前庭側層とotic capsule前庭窓縁は,同じ原基(otic capsule)から発生すると推定される.
f. アブミ骨の脚は,足板部(中耳側層も含めて)より早く発生する.

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