日本耳鼻咽喉科学会会報
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扁桃の免疫機能に関する基礎的検討
藤川 祐司
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1974 年 77 巻 2 号 p. 134-146

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抄録

目的:類リンパ組織の1つである扁桃がどのような免疫機能をもち,かつ免疫学的にどの位置に属するかを知るてだてとして,まずin vivoおよびin vitroにおける扁桃の抗体産生細胞の動態を脾,リンパ節と共に追究した.さらにヒト扁桃におけるT細胞,B細胞の分布につき検索した.このように機能的なまた定量的な面からこの問題に検討を加えて解明を試みた.
方法:in vivo抗原感作実験では,実験動物として家兎をもちいた.経耳静脈性に抗原であるヒツジ赤血球とBovine Serum Albuminをそれぞれ感作した.in vitro抗原感作実験では,ヒト扁桃より採取したリンパ球をヒツジ赤血球とともにMarbrook法でin vitro cultureを行なつた.上記両感作群について経時酌にCunningham&Szenberg氏スライド法によるhemolytic plaqueassayを行ない,PFC(抗体産生細胞)を検索し,その動態を観察した.またヒト扁挑リンパ球について,Jondalの方法に従ってE-RFC,EAC-RFCを調べ,扁桃内のT細胞,B細胞の分布を求めた,
結果:in vivo感作群では経耳静脈注射による全身免疫を行なうと,扁桃には第1回感作時よりPFCが出現し,感作が進むにつれてさらにPFC数が増加し,peak responseに到達する日数は短縮された,脾,リンパ節のPFC数は扁桃より多いが,その動態は同一パターンを示した、一方末檎血にはPFCは出現せず,正常家兎においてもbackground PFCは殆んどみられなかつた.以上の事実より扁桃にみられるPFCは扁桃でin situに形成されたと考えられた.SRBC感作群ではIgM抗体産生細胞が,BSA感作群ではIgG抗体産生細胞が多く形成された.
in vitro感作群ではprimary immune responseとして,ヒト扁桃リンパ球に4日目にpeak responseを示すPFCが形成された.これはマクロファージによる抗原のprocessingに初まり,免疫遂行細胞(抗体産生細胞)による抗体産生に終る免疫応答の全過程が扁桃内で行なわれることを示し,それゆえ扁桃が局所免疫能をもつことが確認された.さらに生体内おいては扁桃で産生されたPrimed Bcell,me-morycellが輸出リンパ管,血管を介して全身に播布することが考えられ,抗原情報の受容伝達臓器としての役割も果すことが推測された.
EおよびEAC-RFCの検索からヒト扁桃においてはT細胞が47%,B細胞が14%に分布することがわかつた.この成績はまた扁桃が液性および細胞性免疫能をもつことを示唆した.
以上の諸知見から,T.B細胞がともに存在し,抗原刺激に対応して細胞レベルで免疫応答を起す扇桃は末梢性類リンパ組織の1つであると考えられる.

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